Walrus AudioのJulia V2は、アナログ回路ならではの温かみと多彩なモジュレーション表現をコンパクトにまとめたコーラス/ビブラートペダルです。シンプルなノブ構成からは想像しにくいほど表現の幅が広く、特にLag(プリディレイ)やDry→Chorus→Vibratoをシームレスに変化させる無段階ブレンド機構が、微細なうねりから深い揺れまでを自在に生み出します。
V2ではトップマウントジャックや踏みやすいソフトスイッチなど実用面の改良が加わり、スタジオでの繊細なサウンドメイクからライブでのタフな運用まで対応可能になりました。ここではJulia V2の基本的な機能、音色の印象、主要コントロールの効き、V2での変更点と使い分け、そして最終的な評価を丁寧に解説します。
製品概要 — 何ができるペダルか
Julia V2はフルアナログ回路で設計されたコーラス/ビブラートペダルで、ギターに〈揺れ〉を付加することで音像に厚みや動きを与えることを主眼としています。一般的なコーラスの温かい厚み付けから、ピッチをより明確に揺らすヴィブラートまで、機能としては一台で広範な用途をカバーします。
LagやLFO波形切替といったパラメータが装備されており、単に「速さと深さ」で済ませない時間軸や波形による細かな表情付けが可能です。コンパクトな筐体ながら操作系は直感的で、初めて触れる人でも手早く狙いどおりの揺れを作れます。
サウンドの特徴と実際の音色描写
Julia V2の音はアナログならではの温かみと滑らかな倍音の揺れが特徴で、ミッドの存在感を残しつつもコードやアルペジオに掛けても濁りにくいのが魅力です。DepthやRateを低めに設定しLagを短くするとタイトで自然なコーラス感が得られ、逆にDepthやLagを大きく取ると海のうねりのような厚みあるビブラートへ移行します。ミックスに馴染みやすい一方で、設定次第では目立つ効果音的な揺らぎも作れるため、楽曲のムード作りにおいて頼りになる表現力を持っています。
主要コントロール解説 — 操作で何が変わるか
主要な操作子はRate(揺れる速さ)、Depth(揺れの深さ)、Lag(プリディレイ)、Dry–Chorus–Vibratoのブレンドノブ、そしてLFO波形切替です。RateでLFOの周期を決め、Depthが揺れの振幅を左右するのは一般的な理解と同じですが、Julia V2の肝はLagと無段階ブレンドにあります。Lagは揺れの立ち上がりを遅らせることで時間的な性格を変え、これにより「ゆっくり立ち上がる柔らかな揺れ」や「即座に効くシャープな揺れ」を使い分けられます。ブレンドはドライからコーラス、さらにヴィブラートへと連続的に移行できるため、演奏中に微妙なニュアンス操作を行いたい場面で非常に有効です。LFOはサインとトライアングルが選べ、サインはより滑らかに、トライアングルはやや直線的でキャラクターのある揺れを与えます。
V2アップデートと実戦での使い分け
JuliaからのV2アップデートでは音質の方向性は継承しつつ、運用面の改善が重点的に行われました。最も実用的な変更はジャックが上部(トップマウント)に移動したことと、踏みやすく堅牢なソフトスイッチへの変更で、これによりボード上での取り回しやライブでの信頼性が向上しています。
音作り面では、空間を埋めたいときやコードの厚みを増したいときにはLagを短めにしてDepthを抑えめにし、劇的なヴィブラートでソロやフレーズにアクセントを付けたいときにはブレンドを振り切りLagとDepthを強めにする、といった実践的な使い分けが馴染みます。V2はスタジオの微調整にもライブのタフさにも対応できるバランスが取れています。
まとめ
Walrus Audio Julia V2は、シンプル操作で多彩な表現ができるアナログ・コーラス/ビブラートです。Lagという差別化されたパラメータと無段階ブレンドの組み合わせにより、従来のコーラス類とは異なる細やかなニュアンス付けが可能になっています。
V2での物理的改善は実用性を高めており、クリーンなアルペジオに浮遊感を与えたいプレイヤーから、歪みサウンドに味わい深い揺らぎを加えたいギタリストまで幅広くおすすめできます。試奏時は特にLagとブレンドつまみの効き方を重点的に確認し、自分の音作りに合う“揺れ”を見つけてください。






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